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2026.05.2218:00

【櫻井保幸】また、いつか。

「また、いつか。」

また前回から1ヶ月くらい空きました。
毎日のように誰かの記事が更新されていて、みんなそれぞれの人間性が見えて面白いですね。
そんな中で僕の記事を追っている人は、多分、特殊な人です。
あ、めっちゃ褒めてますよ。
読んでくださってありがとうございます。

前回の記事の後も、色々反応をもらいました。

「ブログ良かったです」とか、
「ちょっと感動しました」とか。

反応いただけるのは嬉しいですね。
読んでくれた方、感想くれた方、ありがとうございます。
今日も生きれます。



さて今日は、
先週クランクアップした作品のことを書こうと思います。

少し長く関わっていた作品が、
先週、無事に終わりました。

声をかけてもらってから、かれこれ4ヶ月くらい。
長いようで、終わってみるとあっという間でした。

今作で、懐かしい再会がいくつもありました。

昔、別の現場で一緒だった人。
しばらく会っていなかったスタッフ。
「またいつか」と言って別れたままだった人たち。

この仕事は、そういう人たちとまた会えることがある。
続けていれば、ちゃんとそういうことが起きるんだなと思います。

僕は、友達が少ない。
もしかしたら、いないのかもしれない。

おそらく僕は、
人付き合いが得意なほうではないし、
自分から誰かを誘うこともほとんどありません。

ひとりでいられるなら、割と何でもできる人間です。

でも、
映画とかドラマを作ることだけは、一人じゃできない。

どれだけひとりが好きでも、
結局ああいう場所には、誰かがいないと立てない。

だから僕は、
映画やドラマの仕事をしていたいんだと思います。

『死ぬまで関わっていたい』
とまでは、さすがに大げさかもしれないけど。
それでも、できるならずっとここにいたい。

僕が、人と関わっていられるから。

僕はよく、
「人が大好きで、人が大嫌い」
と言います。言ってしまいます。

ひねくれてるし、天邪鬼だとも思います。
でも、そう言ってしまう自分のことは、嫌いじゃありません。

その矛盾ごと、たぶん僕なんだと思います。

そんな僕が、
今もこうして、この業界で仕事ができているのは、
やっぱり幸せなことなんだと思います。

辞めたくない。辞められない。
どっちなんだろう。

まあ、どっちでもいいか。

現場に行けば、また必ず、誰かに会えるから。

最終日、
バラしも終えて、ひと段落して、
スタジオの駐車場に集まって、みんなで挨拶をしました。

「お疲れさまでした」

その後、だいたいみんな自然に言う言葉があります。
もちろん僕も。
僕は、確実に言います。

「また、いつか。」

その言葉が、その日は妙にちゃんと言えた気がした。

「また」も、「いつか」も、
曖昧な言葉だなと思います。

明日じゃないし、約束するわけでもない。

会うかもしれない。会えるかもしれない。
でも、もう会わないかもしれない。

それでも僕は、
その『曖昧なさようなら』が、嫌いじゃありません。
むしろ、好きです。

「また、いつか。」

テキトーで雑なくせに、少しだけ優しさがあると思うから。

「また、どこかで生きているなら、いつか。」
その時まで、僕は生きるから。生きてやるから。
あなたも生きててね。

そんなことを、
言いすぎないまま渡せる言葉のような気がします。

綺麗事かもしれない。
でも、そのくらいがいいんだと思う。

そういう綺麗事のおかげで、少しだけ助かる夜もあるから。

その日もまた、
帰りにいつものバーに寄りました。
前にも書いた店です。

マスターが顔を上げて、
「お疲れさまです」と言ってくれました。

僕はカウンターに座って、いつものウイスキーを頼む。

グラスが置かれて、ひと口飲んで。

「終わりましたか」
マスターが聞きました。

「はい。今日、クランクアップしました」
「それは、お疲れさまでした」
「ありがとうございます」

僕は少し迷ってから続けました。

「最後、みんなで『また、いつか。』って言い合ってて…」

マスターは、何も言わずに聞いていました。

「いい言葉ですよね」
そう言いかけたとき

店の奥から、
「私は、あまり好きじゃないです」

僕は思わず振り向きました。

カウンターの一番端。
黒い服。肩までの髪。色白の横顔。

あの時の女性でした。

駅前のベンチで会って、
この店でも見かけた人。

彼女はコリンズグラスに指を添えたまま、こちらを見ていました。

前よりも、
少しだけちゃんと目が合った気がしました。

「…そうなんですね」

僕がそう言うと、
彼女は小さく頷いて答えました。

「大体、会えないから」

その言い方が、
冗談みたいでもあり、本気みたいでもありました。

僕は少し考えて、
「たしかに、そうかもしれません」

「…でも」と続けて、

「会えないかもしれないけど、
生きててほしいなと思う人に言うには、
ちょうどいい言葉な気がするんです」

彼女は少しだけ目を細め、
「綺麗事ですね」

「そうですね」
僕がすぐに答えると、

彼女は少しだけ笑って

「でも、嫌いじゃないです」

彼女はそう言って、
目の前のロングアイランドアイスティーを飲み干し
「はあ」と大きく息を吐いた。

僕は、なぜか少し救われたような気がした。

マスターは何も言わずに、グラスを拭いている。

僕は彼女に、
「覚えてたんですね」
そう聞くと、彼女は少しだけ首を傾けて

「二回も会ったら、さすがに」

それが、からかっているのか、本気なのかはわかりません。
でも、前よりも遠い人ではなくなった気がした。

「この前は…」
僕が言いかけると、彼女は静かに遮りました。

「大丈夫です」

それから少し間を置いて、
「今日のほうが、ちゃんと話せそうです」

僕はロックグラスを置いて、彼女に聞きました。
「じゃあ、今日なら聞いてもいいですか」

「何をですか」

「名前」

彼女はすぐには答えず、
少し考えるように視線を落として、
小さく息を吐いてから

「…今度にします」

思わず笑ってしまった。

「今日じゃないんですね」

「まだ、そこまでじゃないので」

その返しが、なんだか嬉しかった。
『拒絶』ではなく、『先送り』だったから。

彼女は空になったグラスを見ながら、
ぽつりと呟きました。

「でも…」

「でも?」

「『また、いつか。』とは思いました」

その言い方は、独り言みたいに静かで。
だからこそ、ちゃんと聞こえた。

僕は、何も言えませんでした。

何か言ってしまうと、
何かが少し壊れてしまいそうな気がしたから。

それから、
僕らは少しだけ話をしました。

あの、ベンチの夜よりは長く、
でも、
名前を知るにはまだ足りないくらい。

朝陽が昇るにはまだ少し早い時間、
彼女は僕よりも先に席を立ち、店を出ました。

帰り際、
ドアの前で一度だけ立ち止まって、
小さく手を挙げました。
こちらを振り返ることはせずに。

あれが挨拶だったのかどうかは、
今もよくわかりません。

だけど、
その曖昧さごと、嫌いではなかった。
むしろ、心地よかった。

「また、いつか。」

その言葉を、
もっと好きになれた、いい夜でした。

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本記事の主題歌的な曲を作りました。
よかったら聴いてください。
「夜明け前。」https://x.gd/oZ5vn





明日は、根井深考。ねのいみのり。
破天荒な天才。天災。多分。
毎日ライブ配信も頑張ってる真面目な努力家、みのりくん。

次回も、サービスサービス!

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